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お世話になった人に財産を残さないと地獄に直行?寄与分を忘れるな

お世話になった人に財産を残さないと地獄に直行?寄与分を忘れるな

自分が亡くなった後に、人から恨まれるのは決して心地いいものではないでしょう。

しかし、相続を一歩間違えてしまったために、残された人間から恨まれる人もいます。

恨まれる原因は「相続がもらえない」、「相続する金額が少ない」という理由に尽きます。
恨みを持つ人には「私には遺産相続される権利がある」、「多くの遺産をもらって当然」という意識があるのです。

例えば、以下のような恨み言が一般的です。

  • 義父の介護をしたのは私なのに相続できないなんて理不尽!
  • 家業を急成長させたのは自分なのに他の相続人と平等なんて信じられない!
  • 家を飛び出して長年行方知らずだった兄が突然相続の権利を主張しはじめた!

あなたの死後にあなたが恨まれるだけであれば、問題ないと考えるかもしれません。

しかし、その恨み、怒りの矛先は残された他の相続人に向けられることがあります。

あなたの相続を機に相続人同士の人間関係に波風が立つのは、望ましいことではないでしょう。

お世話になった人に多くの遺産を残すためには寄与分の知識は欠かせません

そこで今回は、お世話になった相続人を優遇する「寄与分」の全体像をお伝えします。


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寄与分のわかりやすい解説

寄与分について以下のテーマに沿って解説していきます。

  1. 寄与分についての民法の規定
  2. 寄与分が認定される条件
  3. 寄与分が認められる行為・認められない行為
  4. 寄与分の判例
  5. 寄与分の計算方法
  6. 寄与分がある場合の相続税
  7. 寄与分を求める調停手続き
  8. 寄与分と遺留分の優先度
  9. 寄与分の時効

寄与分についての民法の規定(A)

民法では、遺産の分割にあたって、被相続人の財産の維持や増加について特別な寄与をした相続人に対して配慮しています。

まずは、寄与分について定めた民法第904条の2をそのまま載せておきます。

  1. 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
  2. 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
  3. 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
  4. 第二項の請求は、第907条第2項の規定による請求があった場合又は第910条に規定する場合にすることができる。

【出典:民法第904条の2】

民法を読んでも沢山の疑問が頭に浮かぶでしょう。

例えば、以下のような疑問です。

  • 寄与分はどうしたら認定されるのだろう?
  • 寄与分に当てはまる具体的な行動は?
  • 過去の判例はどうなっているだろう?
  • 寄与に該当する具体的な行為は?
  • 寄与分はどうやって評価したらいいのだろう?
  • 寄与分がある場合には相続税はどうやって計算するのだろう  etc

安心してください。

それらの疑問に対する答えは、これからわかりやすく解説していきます。

寄与分が認定される条件(B)

寄与分が認定されるためには、高いハードルがあります。

以下の2つの条件のどちらかを満たす必要があります。

  1. 相続人全員の意見の一致
  2. 家庭裁判所の審判

「相続人全員の意見の一致」とは、特定の相続人に多くの相続をすることを、他の相続人の全員が納得しなければなりません。

すんなり寄与分が認められることもありますが、そう簡単にいかないこともあるのは容易に想像できるはずです。

そして、もしも相続人全員の意見の一致が得られない場合には、家庭裁判所に調停を申立てる必要があります。

調停は第三者を交えた話し合いの場であり裁判ではありません。費用も数千円しかかかりません。

しかし、調停が開かれると他の相続人には家庭裁判所から呼び出し状が届きます。

普段裁判に縁遠い大多数の人にとって、家庭裁判所からの呼出状は「宣戦布告」のような意味合いで受け取られる可能性があります。

さらに、家庭裁判所の呼び出しを無視すれば欠席裁判のような扱いを受けることを危惧するため、出席しないわけにはいきません。

相続人同士が近くに住んでいるのであれば良いですが、相続人同士がバラバラに住んでいるならば、出席するだけでも負担が大きいです。

つまり、宣戦布告をされた挙句、調停への出席という負担が発生するわけですから、その時点で相続人同士の人間関係にヒビが入ることが予想されます。

さて、これまでの説明で、寄与分が認められるハードルは非常に高いことを理解いただけたと思います。

ですから、お世話になった人にお世話になった分の気持ちを上乗せして財産を残したいのであれば、寄与分があるから大丈夫だろうとタカをくくってはいけません。

寄与分を認めた遺言書を残すもしくは、生前贈与を実行するのが賢いやり方です。

可能であれば、関係者全員を呼び寄せて、遺産協議書を作成しておくのが望ましいです。

なお、関係者の中には相続人の配偶者も入れておくのが望ましいです。
なぜならば、相続人本人が納得しても、配偶者から異論が唱えられると立ち振る舞いを変える人物が現れないとも限らないからです。
(妻には逆らえない夫は世の中には沢山存在します。)

さて、ここまでの説明を読んだ方であれば、お世話になった人のために遺言書の作成もしくは生前贈与を検討すると思います。

そして、次に気になるのは以下のような点ではないでしょうか?

  • 一体どんな行為をしてくれた人に遺産を残すべきだろうか
  • お世話になった行為に対してどれくらいの遺産を残すべきだろうか

つまり、お世話になったからといって沢山の遺産を残すと、それはそれで他の相続人の反感を買うことになります。

お世話になった人に財産を相続させたい一方で、相続人の反感を買い余計なトラブルを招きたくない。

そんなジレンマを抱えることになると思います。

そこで、ここからはどんな行為に寄与分が認められるのかを解説していきます。

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寄与分が認められる場合・認められない場合(C)

これまでに寄与分が認められた判例をみると、次のようなケースで特別の寄与があったと認められています。

  1. 被相続人の事業に対し、無報酬またはそれに近い状態で労務を提供
  2. 被相続人に財産的な支援をし、債務返済等に充てて財産の維持に寄与
  3. 被相続人の医療看護に努め、医療関係費の支出を抑えて財産維持に寄与
  4. 本来複数の相続人が不安すべき扶養義務を一手に担い、財産維持に寄与

上記の具体的な判例は、「寄与分の判例(D)」で詳しく紹介していきます。

一方で、以下の場合には寄与分が認められることはありません。

  1. 相続人が亡くなっている場合(代襲相続で寄与分が考慮されることはない)
  2. 法定相続人ではない(相続人の妻 等)
  3. 夫婦間、または親族間での通常の家事労働・相互扶養義務の範囲内の寄与

寄与分が認められないことによりトラブルになることが多いのは、上記ⅱ「法定相続人ではない」パターンです。

例えば、あなたの子供の配偶者が、あなたの介護を長年担当していても認められる寄与分は「ゼロ」です。

寄与分は、相続する遺産にプラスアルファで相続財産を加算するという概念なので、そもそも相続する権利がない人に寄与分は認められないのです。

もしも、お世話になった人に財産が平等に行き渡るという甘い考えを持っているのであれば、すぐさま投げ捨ててください!

なんで義父(義母)のお世話をしたのに相続する財産は平等なの?義父(義母)の面倒を全くみていない、あなたの兄弟は何様なの?わたしも、お金目当てで介護していたわけじゃないけど、なんだか腑に落ちない。悔しい!」と配偶者から泣きつかれるお子さんも不憫です。

繰り返しになりますが、生前贈与をするか遺言書を作成し、しっかりと対策しましょう。

なお、「息子の妻は相続人になれないのか?」等の疑問を持たれた方は、以下の記事を参照してください。

相続人の範囲と、相続順位についてわかりやすく図にまとめています。

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寄与分の判例(D)

寄与分に関する代表的な判例を以下のカテゴリに沿って紹介します。

但し、話が細かくなるので全てに目を通す必要はありません。

「判例はこんな感じかぁ~」という程度に目を通して頂くだけで十分だと思います。

あなたに関係ありそうなものだけ確認していただいたら、「寄与分の計算方法 E」に進んでください。

  1. 事業・家事従事による事例
  2. 共働き・出資による事例
  3. 医療看護による事例
  4. 財産管理による事例

家業・家事従事による事例(D-1)

家業・従事による判例を箇条書きで説明します。

  • 約25年間家業に従事した子に1割の寄与分(福岡家小倉支審昭56.6.18)
  • 農業後継者として家業に従事し、被相続人の扶養にあたった子に1,000万円(全遺産の3.7%)(千葉家一宮支審平3.7.31)
  • 農業後継者の寄与分を遺産の総額の50%(横浜家審平6.7.27)
  • 農業従事期間中、「人力による農作業標準賃金の1日あたりの単価」に、年間の作業日数を60日、生活費として40%を控除することにして、寄与分を算出(盛岡家一関支審平4.10.6)
  • 被相続人に代わって医療法人の経営に貢献した子に相続財産の3割(大阪高決昭54.8.11)

上記の例をみると、寄与分が認められる割合にはバラツキがあることがわかります。

あくまで寄与分が認められる割合は、ケースバイケースだということです。

共働き・出資による事例(D-2)

共働き・出資により寄与分が認められた事例を箇条書きにします。

  • 被相続人が創業した株式会社が経営危機に陥った時に資金援助をした相続人に被相続人の遺産の20%(高松高決平8.10.4)
  • 被相続人である夫もサラリーマン、妻もサラリーマンであり、それらによって得た収入で、宅地、建物を購入したケースで、妻の寄与分を82.3%(和歌家審昭59.1.25)

以上の例をみるとわかると思いますが、そもそも残された遺産は自分の財産だと主張したいケースもあると思います。
その場合は、自分が亡くなったわけでもないのに、自分の承諾なしに他の相続人に財産分割されることに納得いかないのは当然かもしれません。

医療看護による事例(D-3)

医療看護による事例に興味がある人は多いと思います。
介護をしているのだから、財産を多めにもらっても良いと考えるのは自然なことかもしれません。

以下の2つの事例について少し詳しく説明していきます。

  1. 介護で遺産総額の15%を得た事例
  2. 介護で金銭を受領していたが遺産総額の3.2%を得た事例
  3. 認知症の介護費用で876万円が認められた事例
介護で遺産総額の15%を得た事例(D-3-ⅰ)

まずは、大阪高等裁判所平成19年12月6日決定の判決内容をご確認ください。

遺産分割及び寄与分を定める処分審判に対する抗告審において、被相続人の死亡まで自宅で介護をした申立人の負担は軽視できず、申立人が支出した費用は,遺 産の形成維持に相応の貢献をしたものと評価できるが、遺産建物の補修費関係の支出は,被相続人と同居していた申立人自身も相応の利益を受けており、申立人 の寄与を支出額に即して評価するのは建物の評価額からすると必ずしも適切ではないこと、農業における寄与についても専業として貢献した場合と同視できる寄与とまでは評価できないことなどから、寄与分を遺産総額の30パーセントと定めた原審判を変更し、遺産総額の15パーセントと定めた。
【出典:家庭裁判月報60巻9号89頁)】

上の判決では、寄与と認められたものと寄与と認められなかったのものがあります。

寄与と認められたものは、「被相続人に対する介護」です。

その一方で、「遺産となる建物の補修費用の支出」、「農業を手伝った」ことによる寄与は、特別な寄与としては認められていません。
それぞれ、「建物に一緒に住んでいた」、「専業として貢献したほどではない」と結論づけられています。

介護で金銭を受領していたが遺産総額の3.2%を得た事例(D-3-ⅱ)

まずは、大阪家庭裁判所平成19年2月26日審判の内容をご確認ください。

被相続人に対する介護を理由とする寄与分の申立てに対し、申立人の介護の専従性を認めた上で、申立人が被相続人から金銭を受領しているものの他の相続人ら も同様に金銭を受領していた事実があるから、その介護の無償性は否定されず、寄与分を評価する上で評価すべき事情としてその他の事情と併せ考慮し、申立人 の寄与分を遺産総額の3.2%強である750万円と定めた。
【出典:家庭裁判月報59巻8号47頁】

この判決からわかるのは、仮に被相続人からお金をもらっていても、無償性が担保されることがあるということです。

介護に専従している状態で、被相続人から金銭を受領していたとしても、他の介護をしていない相続人も同様に金銭を受領していれば、介護の無償性が認められるのです。

認知症の介護費用で876万円が認められた事例(D-3-ⅲ)

まずは、大阪家庭裁判所平成19年2月8日審判の内容をご確認ください。

被相続人に対する身上監護を理由とする寄与分の申立てに対し、被相続人が認知症となり、常時の見守りが必要となった後の期間について,親族による介護であることを考慮し、1日あたり8000円程度と評価し、その3年分(1年を365日として)として,8000円×365日×3=876万円を寄与分として認めた。
【出典:家庭裁判月報60巻9号110頁】

認知症の介護により、一日8,000円の寄与分が認められています。

8,000円の費用が高いか安いかは、判断が分かれるポイントかもしれません。
しかし、一日も休みがなく介護をする必要がない認知症介護の実態がキチンと反映された判決だといえるでしょう。

財産管理による事例(D-4)

財産管理により寄与分が認められたケース、認められなかったケースを紹介していきます。

  1. 株式投資で財産を増やした事例(大阪家審平19.2.26)
  2. 財産管理の手続きを精力的に尽くした事例(長崎家諫早出張審昭62.9.1)
株式投資で財産を増やした事例(D-4-ⅰ)

まずは、大阪家庭裁判所平成19年2月26日審判の内容をご確認ください。

被相続人が所有していた資産を運用し、株式や投資信託により遺産を増加させたことを理由とする寄与分の申立てに対し、株式、投資信託による資産運用は利益 の可能性とともに常に損失のリスクを伴うことから、単に株価が偶然上昇した時期を捉えて被相続人の保有株式を売却した行為のみで特別の寄与と評価するには値しないでは、>として、寄与分の申立てを却下した。
【出典:家庭裁判月報59巻8号47頁】

この判決では、株式投資は博打だと認められています。
財産を増やせば寄与分として必ず認められるというわけではないということです。

つまり、寄与行為と財産の維持や増加に明確な因果関係が認められない場合には、寄与として認められません。

財産管理の手続きを精力的に尽くした事例(D-4-ⅱ)

財産管理の手続きを精力的に尽くせば、その寄与分を認められることがあります。

土地売却に当たり借家人の立ち退き交渉、家屋の取壊し、減失登記手続き、売買契約の締結に努力した功績で、寄与分300万円を認められた事例があります。

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寄与分の計算方法(E)

寄与分の計算方法は、民法で明確に規定されていません。
そのため、この計算式が正しいという唯一無二のものはありません。

大事なことは寄与分を正確に計算することではありません。
大事なことは、周囲に納得させることができるか否かだということだと思います。

以下に寄与分の計算式をいくつか紹介しますが、あくまで参考に留めてください。
なお、実際に議論の的になるのは、計算式そのものよりも計算式に当てめる数値であることが多いです。

  1. 共働きの計算式
  2. 医療看護の計算式
  3. 財産管理の計算式

家事従事(共働き)(E-1)

家事従事による寄与分は以下のように計算できます。

  • 受けるべき年間給与額×(1-生活費控除割合)×寄与年数

上記計算式は、夫婦共働きであるにも関わらず家事の大部分をこなしてきたような場合の計算式です。

但し、どんなに共働きであっても全てが寄与分として認められるわけではありません。

一緒に生活している以上は、一定程度を控除する必要があるでしょう。

医療看護の計算式(E-2)

医療看護の寄与分を計算するためには、2つの計算式が考えられます。

  1. 費用負担額
  2. 日当を仮置きする方法
費用負担額(E-2-ⅰ)

費用負担の実費があれば、それをそのまま寄与分とするのが一番簡単な方法です。

  • 寄与分=費用負担の実費
日当を仮置きする方法(E-2-ⅱ)

療養看護費用から寄与分を計算する方法もあります。

  • 寄与分額=日当額×療養看護日数×裁量的割合

日当額をいくらにするのか?裁量的割合をいくつにするのかは議論になるポイントです。

先ほど紹介した認知症看護の判例では、日当8,000円という判決が下されていました。
裁量割合は、24時間一人でずっとつきっきりで介護していれば100%になると思います。

財産管理の計算式(E-3)

財産管理の寄与分を計算する方法は2つ考えられます。

  1. 第三者に依頼した場合の報酬額から計算
  2. 負担した実費から計算
第三者に依頼した場合の報酬額から計算(E-3-ⅰ)

第三者に依頼した場合の報酬額から計算する方法があります。

  • 寄与分=(第三者に依頼した時の報酬額)×(裁量割合)

例えば、「本来司法書士に依頼すべき不動産登記の手続き」、「不動産の賃貸管理」、「借家人の立ち退き交渉」などが当てはまります。

負担した実費から計算(E-3-ⅱ)

負担した実費から計算する方法があります。

  • 寄与分=実費

例えば、「火災保険料」、「修繕費」、「不動産の公租公課の負担」などが当てはまります。

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寄与分がある場合の相続税(F)

寄与分 相続税

特定の相続人に寄与分が認められた場合の、相続税の取り扱いが気になる方もいるでしょう。

寄与分が認められた場合、寄与分には通常どおり相続税が発生します。

そして、寄与分がある場合とない場合で異なるのは、相続財産の分割方法です。

上図は、寄与分がある場合の分割方法を図示したものです。

つまり、相続財産の中から寄与分を別枠にして、残った財産を分割して相続することになります。

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寄与分を求める調停手続き(G)

既に説明した通り、寄与分は相続全員が納得するか、家庭裁判所の審判によってのみ確定します。

そのため、もしも相続人全員が納得しなかったり、協議そのものができない場合には、家庭裁判所に「寄与分を定める審判の申立」をする必要があります。

ここからは、寄与分を求める調停手続きの流れに沿って説明していきます。

  1. 遺産分割協議
  2. 寄与分を定める処分調停の申立
  3. 調停で主張を認めてもらうのに役立つもの
  4. 寄与分が認められた相場

遺産分割協議(G-1)

寄与分を定める処分調停を申立てる前に、遺産分割協議を十分に行うことをお勧めします。
誰だって調停手続きをすることは望ましいとは考えないはずです。

なぜならば、調停は平日に開催されるので日中の仕事があれば、参加するだけで一苦労だからです。

また、申立先の家庭裁判所は、相続人のいずれか1人の住所地がある場所と定められています。
そのため、申立人とは遠方で暮らす相続人にとっては、「嫌がらせ」に近い大きな負担になります。
とはいえ、調停に参加しなければ、その人の主張を調停員に訴えることができないため、無理してでも参加するか代理人(弁護士)を立てる必要があります。

あなたの寄与分に対して否定的な考えを持つ人であっても、あなたが本気で家庭裁判所に申立をすることがわかれば、譲歩を勝ち取れるかもしれません。

寄与分を定める処分調停の申立(G-2)

寄与分を定める処分調停の申立に必要な書類は、家庭裁判所のホームページで必ずチェックしてください。
なお、書類の記入方法等が分からなければ、家庭裁判所の窓口でも丁寧に教えてくれます。

念のため、家庭裁判所の公式情報を記載したPDFファイルをダウンロードできるようにしておきます。

PDFファイルには、必要な書類、書類の提出方法、申立先、費用などが記載されています。

調停で主張を認めてもらうのに役立つもの(G-3)

調停では調停員といわれる第三者が、当事者の言い分を聞いて客観的に落とし所を探ります。

そもそも、調停は白黒をハッキリつける場ではありません。
あくまで話し合いの延長線上であり、全員が納得できる結論を探るのが目的です。

もしそのことを知らないと、「なんで自分の主張を全面的に認めてくれないのだろうか?」と不満を抱くことも珍しくありません。

そのような事態を避けるためには、以下の2点を持参するのが望ましいです。

  1. 第三者が納得できる寄与分を証明する証拠
  2. これまでの経緯や主張を端的に整理した陳述書
第三者が納得できる寄与分を証明する証拠(G-3-ⅰ)

第三者が納得できるように、寄与分を証明する証拠を用意しましょう。

寄与分の種類によって以下のような証拠があるのが望ましいです。

家事への寄与を証明するもの
  • タイムカード
  • 取引先相手とのメールのやり取り
介護による寄与を証明するもの
  • 診断書
  • カルテ
  • 介護ヘルパーの利用明細
  • 連絡ノート
  • 介護実績がわかる日記 等

その他、寄与分を求める根拠によって用意しておくべき証拠は異なります。

これまでの経緯や主張を端的に整理した陳述書(G-3-ⅱ)

家庭裁判所に提出するの申立書にも、これまでの経緯を記載する欄が用意されています。

弁護士に依頼せずに、自分で申し立てを行う際には、記入例を参考にわかり易い記載に務めましょう。

なお、もしも弁護士に依頼するのであれば、申立書の他に陳述書を用意するかもしれません。

陳述書を用意することで、申立書に書ききれない事情を整理すれば、より正確に主張が伝わる可能性があります。

寄与分の相場(G-4)

寄与分 相場

さて、寄与分について申し立てた審判の結果について興味がある方もいると思います。

上図は、遺産分割で調停成立した事件のうち、寄与分の定めがあった事件数を集計したものです。
【家事 平成25年度 51遺産分割事件のうち認容・調停成立で寄与分の定めのあった事件数  寄与分の遺産の価額に占める割合別寄与者別  全家庭裁判所】

寄与分について家庭裁判所で争った事例によれば、全体の半数以上は「遺産の価額に占める割合が20%以下」であることがわかります。(ピンク色塗りつぶし部分)

遺産の金額により受け取れる金額も変わってくるのですが、遺産総額が3,000万円であっても10%で300万円ですから軽視できない金額です。

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寄与分と遺留分の優先度(H)

さて、ここからは少々マニアックな話題について説明していきます。

寄与分と遺留分の優先度について疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。

なお、遺留分とは、相続人に最低限認められる相続額のことです。
例えば、遺言書に「特定の相続人に全ての財産を譲る」と記載されていた場合であっても、法定相続人は遺留分を主張することで一定の財産を相続する権利を主張することができます。

つまり、特定の相続人に多くの寄与分を認める決断を下した時に、それが他の相続人の遺留分を侵害するほどの金額であった場合には二つの可能性があります。

  • 遺留分を侵害する寄与分は一切認めない!
  • 遺留分を侵害する寄与分も場合によっては認められる

さて、「寄与分」と「遺留分」はどちらが優先されるでしょうか?

上記質問の答えですが、どちらを優先させるかは民法では明記されていません。

また、遺留分と寄与分を主張する手続きはそれぞれ異なります。

遺留分は「遺留分減殺請求」で主張するのに対して、寄与分は遺産分割調停の中で主張することになります。

そのため、どちらの請求手続きの中で先に主張されるかで判断が異なるようです。

結論から言うと、以下のような回答になります。

  1. 遺留分減殺請求のなかで、寄与分の主張は認められない
  2. 遺産分割調停のなかで、遺留分を侵害する寄与分は認められることがある

それぞれの回答の中身をより詳しく解説していきます。

遺留分減殺請求のなかで、寄与分の主張は認められない(H-1)

遺留分減殺請求とは、相続人が最低限相続できる相続を取り戻す主張のことです。

遺言や生前贈与(亡くなる3年前まで)により、特定の人物に相続が集中してしまった際に申立てることができます。

遺留分減殺請求での戦いの構図は、「大半の財産を受け取った相続人」と「遺留分を下回る財産しかもらえなかった側」との闘いです。

この戦いは、もたざる側である「遺留分を下回る財産しかもらえなかった側」が勝利するようです。
ですから、遺留分を侵害された側の方々は、遺留分減殺請求を検討する価値があります。

一方で、「大半の財産を受け取った相続人」は納得がいかないでしょう。

冷静に考えてみると、遺留分減殺請求では、そもそも相続した財産が寄与分であったか否かの議論が抜け落ちています。
だからこそ、「負けた」と考えて良いと思います。

もし、遺留分を侵害するほど多くの寄与分が認められて当然という気持ちがあるのであれば、この先を読み進めて下さい。

遺産分割調停のなかで、遺留分を侵害する寄与分は認められることがある(H-2)

もしも他の相続人の遺留分を侵害するほど多くの寄与分を主張したい場合には、先に遺産分割調停を申立てるのも一つの手です。

しかし、裁判で他の相続人の遺留分を侵害するほど多くの寄与分が認められるのは、「特別多くの寄与があった」場合に限られます。
どうしたら、裁判で主張を認めてもらえるかという点について明確な答えはありませんので、遺産相続に強い弁護士に相談することが望ましいです。

ちなみに、弁護士が必要な裁判では費用対効果を必ず検討して下さい。
精神的負担と、時間、弁護士費用を差し引いても、十分な意義がある裁判だと確信がもてない場合には、遺留分を支払ってスッキリしたほうが良い場合もあります。

また言うまでもないかもしれませんが、生前から寄与分と遺留分に関する争いが勃発する可能性が高いのであれば、生前に相続人同士でじっくり話し合いを尽くすのが一番です。

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寄与分の時効(I)

寄与分の時効に関する規定はありません。

しかし、はるか前の寄与行為によって財産がいったん増加したものの、その後財産が減少したといった場合は寄与分は認められません。

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まとめ

寄与分を主張するのであれば、他の相続人の遺留分を侵害しない範囲で遺言書にその旨を記載してもらうことが望ましいです。

それより更に望ましいのは、被相続人の生前に相続人全員の理解を得ることです。

そしてその内容を遺産分割協議書として残して公正証書にしておくと、より一層相続対策が磐石なものに仕上がります。

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